Prince『LotusFlow3r』

プリンスが、今春3枚組のアルバムをリリースしている。これが、いろいろな意味で話題になっている。


まずは流通網だ。アメリカの大手スーパーマーケットチェーン「ターゲット」からの独占販売となり、レコード会社やレコードショップは関与しない。全体的にCDの売り上げが下降する傾向にあり、アメリカでは既にタワーレコードも破綻していて、アーティストが自ら販売網を確保しようという動きは高まるばかり。ポール・マッカートニーのスターバックスとの提携や、オンラインからのダウンロード販売などは、そうしたことなのだろう。


さて、アルバムの内容だ。1枚目が『Lotus Flow3r』で、ロック7、ジャズ/ファンク3といったところの音作りで、『Rainbow Cjhildren』や『Planet Earth』の系譜を継承している印象がある。個人的には、3枚の中で最初聴いたときに最もしっくりきたアルバムだ。2枚目は『MPLSound』で、こちらはメロウな曲が並んでいる。鍵盤の音色やコーラスなどの音作りは、プリンスの初期、つまり『For You』から『Cobntroversy』までの音を思い起こさせる。一聴したときは少し面食らったが、繰り返し聴くうちに深みを感じられるようになった。


そして3枚目だが、コチラはプリンスがプロデュースしたブリア・ヴァレンテという新人女性シンガーのアルバム『Elixer』になっている。ヴォーカルこそこの人だが、音は聴けばすぐわかるプリンス印で、かつてのアポロニア6やヴァニティ6の女性ソロアーティスト版というように思えなくもない。そして、コチラも繰り返し聴いているうちに感じるようになったのだが、全曲プリンスが歌ってしまえばそのままプリンスのアルバムとして成立するクオリティがあるということだ。


もともとプリンスが目指していたことのひとつに、ボーダーレスがある。人種、男女、音のジャンルなどがそれで、現在も自身のシンボルにしている例のマークは、男女の記号とラッパ(=音楽)を組み合わせていて、境界線を崩し、混合させることを意味している。今回のブリア・ヴァレンテも、言わばプリンスの表現手段のひとつとして選ばれた人なのではないだろうか。


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Prince『21Nights』 




























プリンスの写真集『21Nights』を買った。2007年のロンドンでのO2アリーナ公演を含む、その前後をストーリー仕立てにした内容である。

まずは飛行機でロンドンの空港に降り立ち、ベンツでホテルへ。ホテルの部屋は当然ながらだだっぴろいスウィートだ。場面が変わる毎に「5 of 21Nights」といったようなカウントダウンっぽいテキストが入る。やがてプリンスは、ホテルからO2アリーナへ移動。リハーサルや会場設営の風景などもあり、またバックバンドであるNPGの面々、ダンサーなどのアップも出てくる。ライヴのシーンも他のシーンと同様の割り当てで、ライヴだけが拡大という編集にはなっていない。そしてライヴ終了後はアフターパーティへと繰り出し、しかしひと気のない夜の街でたたずんでいるプリンスなのだった

。 この写真集にはライヴCDも同梱されていて、どうやらアフターパーティーの音源らしい。セットリストはキャリア横断的になっていて、『Girls And Boys』『Delirious』『Alphabetstreet 』が入っているのは少し嬉しい。女性ヴォーカルをフィーチャーした曲も3曲ほどあった。ラストは『All The Critics Love U In London』で、もちろん『1999』に収録されている曲の「New York」をもじった曲である。

しかし、なんと言っても個人的にハイライトだったのは、中盤での『Whole Lotta Love』、つまりレッド・ツェッペリンのカヴァーだ。ここではプリンスがギターを弾きまくる、インストバージョンである。 基本的にワーカホリックのプリンスは、人に曲を提供することはあっても、人の曲を取り上げることはないのでは?とある時期までは思われていた(それが明確な形でオープンになったのは、『Emancipation』でのスタイリスティックスのカヴァーかな)。実はツェッペリンについては、2002年の来日公演時にもこの曲をカヴァーしている。ウラ声で歌っていて、妙な感動を覚えたものだった。

Prince | 2002年11月22日 Zepp Sendai公演レポート

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アメリカンフットボールの最高峰を決するイベント、スーパーボウル。全米での視聴率は40%を軽く越えるそうで、アメリカ人にとっての一大イベントになっているらしい。そしてこのスーパーボウルは、音楽ファンにとっても注目すべきイベントなのである。

ハーフタイムには、アーティストのミニライヴが行われるのが恒例となっている。過去にはエアロスミスとブリトニー・スピアーズが共演したり、U2が同時多発テロ事件の犠牲者名を流すという感動的な演出をしたり、ジャネット・ジャクソンの一件は物議を醸した。昨年は、ローリング・ストーンズが出演している。

そして今年は、なんとプリンスが出演だ。今年の会場は屋根なしで、そして現地はあいにくの雨。ハーフタイムになると、フィールドにはステージセットが設営されたのだが、これが男女の記号とラッパが融合した、例のマーク型になっていた。クイーンの『We Will Rock You』がSEとして流れる中、プリンスが登場。淡いブルーのスーツを着ていて、相変わらずスリムな体形だ。曲はまずは『Let's Go Crazy』で、2人の女性ダンサーを従えつつ、ギターを弾きながら歌うプリンス。続くは『Baby I'm A Star』で、プリンスはギターを手放しハンドマイクで歌いながら花道の方に繰り出した。またこのとき、マーチングバンドがフィールドに登場した。

次だが、やたらとソウルフルな歌い出しで、もしかして新曲か?と思いきや、歌詞には聴き覚えが。なんと、フー・ファイターズの『Best Of You』だったのだ。この人がカヴァー曲を歌うこと自体珍しいことなのに、それも自分より年下の後輩バンドの曲をチョイスするとは、意外も意外。アレンジは原曲の面影をほとんど残しておらず、まるでプリンスのオリジナル曲のよう。そしてラストは『Purple Rain』。プリンスはパープルのギターを手にし、そのギターはステージと同じマーク形になっていた。

時間にして10分そこそこだったと思うが、こういう映像が届けられたことを嬉しく思わずにはいられなかった。プリンスの最近の来日は2002年11月で、つまりもう4年以上も前のことになる。この間プリンスはコンスタントにアルバムをリリースしているし、ツアーも精力的に行っている。とすれば、次はぜひ来日を!
『Endorphinmachine』や『Gold』がK-1グランプリのテーマ曲に使われて、もう何年になるのだろう。そして今夜は、フジテレビの音楽番組「HEY!HEY!HEY!」にて、独占インタビューが放送された。かつてはインタビュー嫌い、メディア嫌いで有名だったプリンスがだ。

まずは、オープニングMCを担当。過去にはマライア・キャリーも務めたことがあり、洋楽勢は結構起用されている。が、早速ダウンタウンの2人にテンションが低いとダメ出しされる始末。いや、この人はもともとぼそぼそしゃべる人なんだが。そしてインタビューは、25分過ぎにオンエア。といっても1分にも満たない短さだが、新譜『Musicology』について、また日本ツアーの予定や日本のファンについて、淡々と語っていた。リップサービスも入っているだろうが、これだけ対日本でメディア露出が多いと、来日公演は年内に実現するんじゃないかって、期待が膨らんで(そしてフトコロは厳しく/笑)しまう。
アメリカン・ミュージック・アウォードやMTVビデオ・ミュージック・アウォードなど、いわゆる「賞」モノについて、今のワタシは特別な期待というものはない。なので、番組をまるまる録画しては早送りでざっと見て、気になったパフォーマンスだけをダビングして保存、という楽しみ方をしている。グラミーもそのたぐいで、ひどいときは録画したテープを見るのが、放送から1ヵ月後になってしまうこともある。

がしかし、今年のグラミーは真っ先に見た。なぜって、まさかまさかのプリンスのパフォーマンスで始まったからだ。パープルのスーツをまとい、例のシンボル型のギターを抱えて『Purple Rain』を歌うプリンス。途中からはビヨンセ(4部門授賞)とのデュエットになり、更に『Baby,I'm A Star』『Let's Go Crazy』といった曲へのメドレーへ。バックバンドはもちろんニューパワージェネレーションで、1年半近く前の日本公演の興奮が、まざまざとよみがえってきた。グラミーの映像を見るようになって、ワタシがここまで感動したのは、恐らく初めてではないだろうか。なお、プリンスが昨年リリースした『N.E.W.S.』も、ベストインストルメンタルなんたら部門にノミネートされていたのだそうだ。

他にもスティングやデイヴ・マシューズらによるビートルズトリビュート、フー・ファイターズとチック・コリアの共演、ベックの紹介を受けてのホワイト・ストライプスなど、気になるパフォーマンスが多かった。グラミー賞も、割と捨てたものではないな。

プリンスのニューアルバムで、タイトルはニュースの意ではなく、『North』『East』『West』『South』という4つの方角の頭文字を取ったもの。収録曲はこの4曲のみで、いずれもがきっちり14分00秒。そしてヴォーカルは一切なく、オールインストだ。

バンドメンバーは昨年の来日公演時と同じで、収録は今年の2月に一発録りされた模様。時折ギタープレイが顔を覗かせはするが、基本はジャズ〜フュージョン〜ファンクで、激しさや荒々しさといった度合いは薄く、淡々と演奏している印象が強い。昨年の公演を観た人であれば、このたたずまいはなるほどと思えるかもしれないが、80'sのプリンスのイメージが強い人がこの作品を聴いたら、かなり面食らうと思う。

生意気かもしれないが、ワタシはプリンスがこういう作品をリリースしても、別に不思議とも思わない。もっと言えば、96年にリリースされた『Emansipation』の辺りから、ああこの人ならこんなことやりかねないよな、と平然と受け止めるようになっている。『Emansipation』は、3枚組全180分というとてつもないヴォリュームと多岐に渡る音楽性だったが、驚くとすればそれは通常のアーティストの創作意欲やリリースのペースを念頭に置けばであって、他のアーティストの比較などとっぱらってしまえば、別に驚くには当たらないのだ。

近年のプリンスはレコード会社からの呪縛を逃れ、自由に音楽活動を続けている。それはアーティストとしてだけに限ったことではなく、人の生き方としても理想的なありようなのではないだろうか。

ライヴのために仙台に遠征したのは、2年前のポール・ウェラー以来だった。そのときはヨメさんも一緒で、ライヴ以外にも仙台や松島の観光をしたり、牛タンを食べたりといろいろ楽しんだ。しかし今回はワタシひとりで、ほとんどプリンスのライヴを観るためだけの遠征だ。

ホテルは、2年前と同じところを予約した。Zepp Sendaiに歩いて行ける近さなのと、駐車場が無料で利用できるからだったが、今回は予約時はクルマで行くかどうかは決めかねていた。横浜から仙台までだと、たとえ渋滞がなかったとしても5〜6時間はかかる。それで着いたその日の夜にスタンディングのライヴでは、いくらなんでもちょっと厳しい。なので結局、新幹線で行くことにした。

昨日の午後3時過ぎに仙台駅に着き、ホテルに向かう通り道でZeppの前をちらっと覗く。既に100人近い人が、列を作って並んでいた。恐らく会員の人たちだと思う。ホテルにチェックインし、少し休んだ後にいざ出陣。この日は横浜も寒かったが、仙台は更に寒く、風が冷たかった。ダウンジャケットを着てきて正解。整理番号順に並び、時間と共に入場。上着はコインロッカーに突っ込み、すぐさまダッシュしてフロア前方に陣取った。

極上のライヴを楽しみ、ホテルに戻ったのが10時過ぎ。今回のプリンスの来日公演は、各所でライヴ後にアフターパーティーが行われているのだが、仙台に限っては会員限定ということで、ここはあっさりと引き上げた。ライヴで暴れてガタガタになった体を大浴場で癒し、就寝。そして今日は10時台の新幹線に乗ってとんぼ返り。午後一には横浜に着いた。仙台駅で牛タンを買っていて、今夜の夕食として食べた。

今まで数多くのライヴを観に行って、ああこの場にいてよかったと実感したことが何度もあった。ワタシにとってのその代表格は、97年や2001年のボブ・ディランであったり、フジロックでのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやイギー・ポップやパティ・スミスであったり、2000年のスカンク・アナンシーだったりする。

今夜のプリンスも、これらのライヴに並んでワタシの心の中に強く残り、そしてこれからも生き続けることだろう。会場がZepp Sendaiというライヴハウスだったことももちろんいい方に作用し、オーディエンスのノリも好調だった。そして今までの公演の構成を崩しに崩したセットリストにブチのめされ、アンコールが終わり、客電がつき、スタッフが機材の後片付けを始め、「本日の公演はこれで終了しました?」という呼びかけがあり、ああこれでもう終わったんだなと思ったそのとき・・・、プリンスは再びワタシたちの前に姿を見せたのだ。

プリンスという人は、特にライヴの場においては、ファンを満足させることをまず第一に考える人だ。それを成し遂げた上で、冒険もすれば実験までしてしまうのが凄いところなのだが、そのプロフェッショナル魂から生み出されたフレームを、自分で崩すことはしない人なのだろうと思っていた。しかしこの夜は、それが崩れたのだ。

再び姿を見せたプリンスに、慌ててスタッフはステージから退散。再び客電が落ちて、アコギ1本で『The Last Decenber』を歌ったプリンス。新作『The Rainbow Children』のラストを飾るこの曲は、『Adore』に並んで、ワタシの最も好きな曲になった。

来日情報が流れたのが9月の末だったこと。ここ数年のプリンスの活動に関する情報が、あまり表立って流れていないこと。チケットの値段が高いこと・・・などから、自分の中ではプリンスが来ることに関してそれほど気持ちが高揚しないのではないかと思っていた。この日記では何度も繰り返して書いているけど、ワタシは11月はライヴが盛りだくさんなのだ。ああー、よりにもよってなんで11月?という、素直に喜べないというのが本音だった。ほぼ全国ツアーとはいえ、日程は浜松以外はウイークデー。せめて東京圏は、1回くらい土日をからめてほしかった、とも思った。

しかし武道館にライヴを観に行って、やっぱりプリンスはすごいということを、改めて痛感した。小柄というよりものすごい細身で、なのにライヴはパワフル。今回はマイテやキャットといったダンサーも擁しておらず、主役はもっぱら音楽そのものだ。プリンスはどんな楽器でもこなすマルチミュージシャンだが、曲によりピアノを弾くことはあったが、ほとんどはギターに徹していた。この人もギター小僧だったのかな。

ワタシは過去、プリンスのライヴを9回観に行っている。89年の東京ドームは生涯初のライヴとなり、いきなりキャデラックでステージに乗りつけたド派手な演出に度肝を抜かれた。90年は『Graffitti Bridge』リリース直後となる東京ドーム2公演に行き、ヒットした『Batman』からの曲などを楽しんだ。92年は唐突に決まった来日で、やはりドーム2公演を観に行った。『Diamonds And Pearls』からの曲が中心となったステージだ。そして96年は、武道館3回に横浜アリーナを観に行った。このときは前年7月に予定されていたのが延期になったものであり、その間に『The Beautiful Experience』がリリースになって、かえって好タイミングとなった。

というわけで、19日の武道館が10回目の公演となった。別に数を重ねればいいというものでもないが、ボブ・ディランの9回やローリング・ストーンズの8回をしのぐ、個人的に最も多くライヴを観たアーティストということになる。そして明日は、仙台まで参戦。自身11回目となる予定のプリンスの舞台は、なんとライヴハウスだ。

プリンスのライヴを観るべく、武道館へ。開場時間よりかなり前に着いたのだが、それはグッズ目当てのためだ。

会場外のグッズ売り場には、既に長蛇の列ができていて、その最後尾に並ぶ。すると、ちょうど販売開始となったようで、列が進み始めた。というわけで、5分とかからずに売り場にたどり着いた。しかし品数は思ったより少なく、Tシャツが2種類に、プログラムに、CDに、アクセサリといった程度だった。結局プログラムだけを買って売り場を離れるが、ひとつだけ心に引っかかることが。それは、ネックレス。例の男女のマークにラッパがからまった、シンボルのネックレスだ。売り場で覗いてみたのだが、予想したよりモノがよくなかったのだ。もともとアクセサリーを身につけないワタシなので、買うのはほとんど自己満足のためでしかないのだが、それにしても・・・。

この後30分ほど考えて結局再び売り場に行き、そのネックレスを買った。実は前回96年のプリンス来日公演時、ワタシは4回も足を運んでいた。そのときにもネックレスは売っていたのだが、前半の公演時には見ていただけで買うことをせず、それがライヴがあまりに素晴らしかったこともあって、やっぱり買おうと思い立った。が、後半の公演のときにはそのネックレスは売り切れになっていたのだ。・・・もし今回も同じことを繰り返したら、ああやっぱり買っとけばよかったという気持ちを、後々にまで残すことになると思ったのだ。

ワタシはTシャツは買った以上は必ず着るが、今回のネックレスは記念品に留まりそうだ。97年のボブ・ディラン来日のときに買った、ブルースハープと同じように。