Patti Smith(パティ・スミス)@オーチャードホール(2013年1月24日)

Shibuya-AX公演は19時30分の定刻スタート。対してこの日は19時開演予定だが、10分ほど過ぎたところで客電が落ちた。メンバーがゆっくりと登場し、『April Fool』でスタート。パティは黒のジャケットに黒のニット帽をかぶり、髪を三つ編みにしていた。

メンバーは、ギターにレニー・ケイ、ベースにトニー・シャナハン、ドラムにジェイ・ディー・ドーハティというお馴染みの面々。『April Fool』ではトニーはキーボードで、なんとレニーがベースを弾いていた。実はギターがもうひとりいるのだが、オリバー・レイとは違うし、誰だろう?・・・開演中はメンバー紹介もなく、結局わからずじまい。帰宅後ネットで調べて、ジャック・ペトルッツェリという人だとわかった。

この日は仙台、AXに続いて来日3公演目なのだが、前2公演のセットリストはほぼ同じだった。がしかし、今夜は『Kinbery』に新譜からの『Mosaic』と、がらっと変えてきた。そして、日本人和太鼓奏者を加えての『Fuji-San』だ。

エイミー・ワインハウスに捧ぐと言って『This Is A Girl』を歌い、仙台・被災地を訪れたときのことを即興で歌ってからの『My Blakean Year』と、今回のパティはいつにも増してメッセージ色が濃い。また、パティは曲中でも頻繁にステージ前方に歩み寄り、最前列の客とタッチしていた。

ギアが一段上がったのは、『Dancing Barefoot』だった。パティは歌いながら三つ編みをほどき、いつも通りのロングに髪形を戻していた。『Beneath The Southern Cross』は、レニー、ジャックに加えパティもギターを弾いた。もともとは静かで美しい曲なのだが、ここでは終盤のエモーショナルで重厚なアンサンブルに唸らされた。

今回、公演前にロビーで募金活動が行われ、募金した人の中から抽選でひとりにメンバーのサインと「絆」の文字が入ったバスドラのヘッドが贈られた。募金がそういうシステムになっていたとは知らなかった。募金は、この日だけで33万円集まったとのこと。このお金は、福島の児童擁護施設に贈られる。

今回の公演は、名義が「Patti Smith And Her Band」となっている。その意味が、ここにきてわかった。パティが袖に捌けて、レニーがリードヴォーカルをとる形で『Bone To Lose』などを演奏する、メドレーコーナーになったのだ。リードギターはほぼレニーが担い、トニーはベースとキーボード、ジャックはほぼサイドギターだが時折シューゲイザーのようなプレイ、ジェイ・ディーは前に出過ぎないクレバーなプレイだ。

そしてパティが舞い戻り、問答無用の『Because The Night』だ。ライヴでは必ず歌われる曲で、これまでにも何度も聴いてきた。なのに、飽きるどころか、曲がどんどん奥深くなり、進化いや変化を遂げていっているのではないかと思わされる。パティの凛々しい姿、間奏のレニーのギターソロ、どれもが最高で、永遠だ。

この後は『Pissing A River』を経て、『Banga』『People Have A Power』となだれ込んで本編を締め括ったが、この2曲は前2公演ではアンコールに演奏されていた曲だ。ということは・・・、と思っていると、やはり、きた。女性アーティストでここまで研ぎ澄まされたアジテーションをするのは、かつても今もこの人くらいだろう。アジテーションに続くのは、もちろん『Rock'n'Roll Nigger』だ。

パティはそれまで着ていたジャケットを脱いでラフないでたちになり、シャウトし、黒のストラトをかきむしる。これだけで押し切っても違和感はなかったが、このままメドレーで『Gloria』になだれ込んだ。正直言って、安心した。知らない人が新譜『Banga』を聴けば、この人をパンクの女王とは思わないだろう。もちろん素敵な年の重ね方をしている人なのだが、さすがにもう尖ることも牙を剥くこともなくなったかな、と思っていた。そこへ、これだ。

長年ロックを聴いてきて、このような表現を使うのははじめてだが、パティ・スミスは大きな母性をもって人々を包み込む、偉大なる母のような存在になったのではないか。彼女のもとに集まるワタシたちは、みな彼女の息子であり娘なのではないか。ならば今度は、ワタシたちが考え、声を発し、拳を振り上げ、行動する番だ。

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