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Pil@Shibuya-AX

フロアの客入りは約半分程度で、土曜の東京公演とは思えない厳しい状況だったが、しかし、ライヴは2年前のサマソニスタジオコーストの公演にも劣らない、素晴らしい出来だった。

予定を10分近く過ぎたところで客電が落ち、ステージ向かって右手側からメンバー登場。ジョン・ライドンの「ニッポン、サイコー」というMCの後、あのイントロがSEとして流れ出した。それに合わせ、ジョンの「Alla〜Alla〜」という呪文のような叫びをはじめ、そして、乾いたドラムの音がかぶさってくる。傑作アルバム『Flowers Of Romance』の冒頭の曲でもある、『Four Enclosed Walls』だ。

『Flowers Of Romance』はベースレスで制作されたので、ここでもほとんどドラムとジョンのヴォーカルとの掛け合いによってのみ、演奏が成立している。個人的には嬉しい出だしだが、決してコマーシャルとは言いがたい曲でもあるので、ライヴのオープニングとしては微妙なのではとも思っていた。しかし、場内のリアクションも上々。さすが、PiLのファンはわかっている。

続く『Albatross』が、最初のハイライトになった。2年前にも体感した、あのいつ終わるとも知れぬインプロヴィゼーションモードを早速ブッ込んできて、なんと15分にも渡る長尺ナンバーとして再構築されたのだ。この音の洪水に浸れる感覚を、こんなに早く味わえるなんて。ジョンの本気度は、少しもブレちゃいない。

『Deeper Water』『Reggie Song』といった、20年ぶりの新譜『This Is PiL』からの曲は、CDで聴く限り洗練された仕上がりに思えたのだが、ここではトリッキーなリフや乾いたドラムなどにより、以前の曲との温度差を感じることはほとんどなかった。

それができるのは、ジョンを支えるメンバーたちの力量がハンパないからだ。大柄なベーシストのスコット・ファースは、3本のベースを使い分け、時にキーボードもこなしていた。最も在籍が長いドラムのブルース・スミスは、ジョンとは阿吽の呼吸のようにリズムを刻んでいる。そしてギターのルー・エドモンドだが、細かくギターを使い分け、メタリックなリフや変態リズムを発している。この人、もっとクローズアップされていい。

こうしたメンバーの持ち味がより垣間見られたのが、『Flowers Of Romance』だ。冒頭のドラムこそSEだったが、ブルースはシンセドラムも含め微妙なリズムを刻み、ルーは弓でギターを弾き、ベースレスのはずのこの曲に、スコットはキーボードだけでなくスティックを加え、という具合で、結果見事にライヴ映えする仕上がりになっていった。

ジョンはほぼ1曲毎にワインのボトルを口にしては含んだ水分を吐き出していて(何が入っていたんだろう)、インターバルをとっている。樽のような体型にはパンク期からの時の流れを思わずにいれらないが、しかし演奏中の集中力の高さと声量の大きさは尋常ではなく、現在57歳という年齢を感じさせない。

本編終盤は『Death Disco』でまたしても無限モードを繰り広げ、再結成PiLではほとんどのショウでオープニングだったと思われる『 This Is Not A Love Song』を奥の手とばかりここで畳み掛ける。ジョンはマイクスタンドをフロアに向けてコール・アンド・レスポンスにチャレンジ。英語圏ではないこの国ではなかなか成り立たないやりとりだが、ここではギリギリで成立していた。そして本編ラストは、伝家の宝刀『Public Image』だ。

アンコールは新譜からの『Out Of The Woods』で始まった。本編で披露された『One Drop』が新譜からのシングルの顔とすれば、この曲はライヴで新たな生命を注入されて化ける曲だ。更には必殺の『Rise』、そしてオーラスはレフトフィールドとのコラボ曲『Open Up』だ。この2曲はPiLの到達点であり、理想郷ではないのかと、個人的に思っている。こうして、2時間に渡ったライヴは幕を閉じた。

2009年に突如PiLが再結成されてから、はや4年になろうとしている。今のバンドは一見ジョンひとりが頑張っていると思われがちだが、実はほか3人も腕利きで、言ってみればナイン・インチ・ネイルズのような性格のバンドなのではないかと思っている。数日前にはグラストンベリー出演も発表され、バンドの勢いはまだまだ止まりそうにない。

結果論になってしまうが、今回はAXではなくリキッドルームかクアトロでやればよかった公演だ。しかし、客の入り具合うんぬんに関係なく、プロフェッショナルとして渾身のパフォーマンスをしてくれた、ジョンとバンドの姿勢は嬉しかったし、誇らしく思う。

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