シガー・ロス(Sigur Ros)@日本武道館

シガー・ロスが武道館。アリーナがスタンディング。この事実にどうにも違和感があったのだが、しかし、当然ながらバンドはものともしなかった。

予定を10分ほど過ぎたところで客電が落ち、向かって右の袖からメンバーが歩いてくるのが見えた。ステージは薄い幕で覆われていたのだが、そのままで演奏は始まった。幕は実は巨大なスクリーンで、映像が映し出される。しかし、メンバーの姿が全く見えないわけでもなく、映像の変化とライトの当たり具合により、シルエットが確認できる。

もしかして、このままライヴが進んでしまうのでは、と思ったそのとき(2曲目の後半)、幕がストンと落ちてステージがあらわになった。映像は、バックドロップに設置された横長のスクリーンにて継続。このスクリーン、状況に応じて上下に動いていた。

来日は去年のサマソニ以来なので1年経っていないが、この間にバンドの状況は結構変化している。キャータンが脱退し、ヨンシー、ゲオルグ、オーリーの3人編成となり、その3人がステージ前面に陣取っている。3人とも黒を基調とした衣装だ。サポートは8人いて、キーボード(つまりキャータンのパート)、ギターや鉄琴をこなす人、トランペットなどの管楽器隊(女2男1)、バイオリンなどの弦楽器隊(女3)という大所帯だ。

セットリストは、かなり攻めている。去年リリースした『Valtari』からは、『Varúð』くらい(『世にも奇妙な映像実験』にも収録されている、ヨンシーの実妹が制作した映像が流れていた)。来月には早くも新譜をリリースすることが決まっていて、そこからと思われる新曲を4曲くらい演っていた。アレンジがラウドでヘヴィーで、よりロックバンドに接近している。

軸になっているのは『Ágætis byrjun』『Takk..』の2枚で、前者はシガー・ロス・クラシックとして機能し、後者は今やマストソングとなった『Sæglópur』『Hoppípolla』といった曲が武道館を包み込む。ヨンシーはギターもしくはキーボードをこなし、ギターのときはほぼ弓を使うボウイング奏法だった。前傾姿勢が著しく、まるでシューゲイザーのようだ。『Hoppípolla』ではベースを弾いていて、つまりゲオルグとのダブルベースに。

シガー・ロスは、これまでアンコールを行わないバンドだった。しかし今回は、本編ラストで他のメンバーがステージを後にし、管楽器隊と弦楽器隊の6人が残って演奏を続け、終わるとステージが暗転した。インターバルは短く、アンコールは『Glósóli』に始まりオーラスを『Popplagið』で締めるという、なんとも贅沢なスパートをかけてくれた。

最後は、もちろん11人で再登場し、横一列になって礼。ここで場内もスタンディングオベーションとなり、感動のライヴは幕を閉じた。

ワタシがシガー・ロスを観るのは5回目だが、今回がベストと思う。2006年にAXで観たり、2008年に国際フォーラムで観たりしたが、バンドが成長していく過程を目の当たりにできたことは幸福極まりない。というか、このバンドをかつてはAXで観ていたのかという、妙な感慨までじわじわと浮かんでくる。

一方、国際フォーラムで観たときは、ライヴは素晴らしかったがバンドは行くところまで行ってしまい、先はあるのかと思った。並のバンドなら、あのタイミングで解散を表明しても不思議はなかったと思う。しかしシガー・ロスは、解散どころか活動再開後の上昇と躍進の勢いが想像以上で、(キャータン脱退なども含め)色々な意味でネクストレベルに足を掛けているのではと思う。

Setlist:
1. Yfirborð
2. Ný Batterí
3. Vaka
4. Hrafntinna
5. Sæglópur
6. Svefn-g-englar
7. Varúð
8. Hoppípolla
9. Með Blóðnasir
10. Olsen Olsen
11. Kveikur
12. Festival
13. Brennisteinn
Encore:
14. Glósóli
15. Popplagið

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