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ポール・マッカートニー(Paul McCartney)東京ドーム:2013年11月18日

18時40分頃に着席したが、ちょうどステージ両サイドのスクリーンから映像が流れ始めた。モノクロのビートルズのフォトや、ポールのアルバムジャケットなどがランダムにミックスされ、上から下へと流れていた。BGMも、ポールの曲だ。

そうして19時10分頃に『Silly Love Song』の終盤がループ状態になり、客電が落ちた。スクリーンにはヘフナーのアウトラインが光輝き、ここでポールとバンドがステージに登場。ポールは場内のどよめきを受け止めると、『Eight Days A Week』でライヴをスタートさせた。

紺のロングコートをまとい、ヘフナーを弾くポール。両サイドには2人のギタリストを従え、後方にはドラマーとキーボードが陣取るという、5人編成だ。続くは新譜『New』からの『Save Us』で、ソロのしかもリリースされたばかりの曲が、既にライヴで機能している。

『Listen To What Man Said』『Let Me Roll It』と、ソロの定番曲が個人的に染みる。『Paperback Writer』を経て、ポールはコートを脱ぎ、向かって右後方のピアノに陣取る。『My Valentine』は現在の妻ナンシーにささげた曲で、映像はナタリー・ポートマンやジョニー・デップが手話をするPVが、そのまま使われていた。

『Nineteen Hundred And Eighty Five』は聴けて嬉しかったし、『Long And Winding Road』は定番曲として揺らぐことがない。そして、亡きリンダに捧げると言って情感こめて歌い上げた『Maybe I'm amazed』が、個人的に最初のピークとなった。

この後、しばらくの間アコギ・ポールが続く。まずは『We Can Work It Out』『Another Day』『And I Love Her』ときて、これらはみな優れた曲ばかりだが、ライヴでやるにはやや地味なためにリスキーな気もしている。これは、ポールの挑戦なのだろう。

続いて、ポールはステージ正面の少し突き出した壇に出てきて、アメリカの公民権運動にインスパイアされた曲と言い、『Blackbird』を。このとき、いつのまにか壇がせり上がっていて、高めのポジションにてポールが歌うという具合。壇の側面には、地球や滝などの映像が流れていた。そして、ジョン・レノンに捧げた『Here Today』だ。

ポールが壇から戻ると、ステージにはサイケ色に彩られたオルガンがセッティングされていて、ポールはそこに収まって新譜から『New』『Queene Eye』、そして『Lady Madonna』を。これらはまだいいとして、続く『All Together Now』『Lovery Rita』は、こんなレア曲やるかよと思う。特に後者は、曲にまつわるエピソードを知っていると(当時、ポールが駐車違反をして反則切符を切った実在の婦警のことを歌っている)、この音がドームに鳴っていることが異様に思えてくる。これも、ポールのチャレンジなのかも。

『Everybody Out There』は、新譜からであり、今回のツアー名にも引用され、言わばツアーのテーマ曲だ。ポールは、同時翻訳をスクリーンに出すこともしてはいるが、MCにはカンペを見つつ日本語も多用。5万人を迎え楽しませんとするこの姿勢は、なんと素晴らしく、なんとかっこいいのだろう。『Everybody 〜』はそうした現在のポールのありかたを反映しているようでいて、個人的に2度目のピークになった。

11年前もやっていた、ジョージ・ハリスンに捧げる『Something』は、ポールのウクレレからフルバンドにシフトするモードだ。楽天的なメロディーが、はっきり言って好きではない『OB-LA-DI,OB-LA-DA』も、ここでは場内大合唱となった。

この後は怒濤のラッシュだ。途中でリズムが変わる、何度聴いても不思議な感じが漂い、それが感動へとシフトする『Band On The Run』。ピアノを弾きながら切々と歌う、人気の『Let It Be』。お約束のマグネシウムが炸裂する、『Live And Let Die』。そして、ラストは男性客、女性客、そしてみんな、といった具合で歌わせる、『Hey Jude』だ。

ファーストアンコールは『Day Tripper』で始まり、続くはウィングスの『Hi,Hi,Hi』。実は、今回のツアーでは『Jet』『My Love』という、ポールのライヴではマストと思われていた曲が落ちている。その代わりに、この曲をはじめレア曲やライヴ初の曲が組み込まれるのは嬉しいところだ。そして、今のところ日本公演で唯一セットリストに変化が生じるのがこの次なのだが、この日は『Get Back』だった。

セカンドアンコールは、ポールがアコギ弾き語りで『Yesterday』を。歌う前、フクシマの被災者に捧げるといったようなことを言っていた。ビートルズナンバーの中でも恐らく最もハードな『Helter Skelter』を経て、いよいよ『Abbey Road』終盤の再現になる。そのラスト、『The End』は、実は曲名や曲調や制作時のエピソードとは裏腹に、永遠に終わることのない音を鳴らすための、ポールの意思の現れのように思え、これが個人的に3度目のクライマックスになった。

今のポールは、そのキャリアにおいて何度目かのピークを迎えていると感じている。バンドメンバーが出たり入ったりしているところ、ポールだけは最初から最後までステージにいた。座ったのはピアノを弾くときだけ、水も飲んでいるようには見えなかった。体型はキープされ、声質は以前と少しも変わらない。71歳にしてだ。若いアーティストだけでなく、50代60代のアーティストたちは、疲れただの引退するだの、言ってられないぜ。

ワタシがポールのライヴを観るのは、これが3度目だ。90年の初来日はスルーし、93年、2002年と観ている。今回ワタシはビートルズナンバーはそこそこにして、ソロの方を重点的に聴いて臨んだ。なのでソロナンバーの方により反応し、楽しむことができた。ビートルズ以上にソロのそして現在のポールを求めたワタシは、3度目にして、やっと、この人のファンになりえたのではないかと思う。

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